※『借りぐらしのアリエッティ』本編とは設定が異なります。ご了承ください。
私はここまで人工知能の勉強を順調に行ってきた。
人工知能とは何か?というところから始まり、人工知能の種類や歴史について学んできた。
人工知能は、人類がゆっくりと時間をかけて進化させてきたものであることも知った。
だが、ある重要なことに気が付いたのである。
「人工知能ってそもそもどうやって開発するの?」
そんなすごい人工知能を自分なんかがどうやって開発するのか、と。
自分はプログラミングも一切勉強したことがない。
パソコンは一応使えるが、普段はネットサーフィンぐらいしかしない。
今から1からプログラミングを学んだとして、本格的な開発ができるのに何年かかるのだろう。
私は途端に視界がぼやけてくるような感覚がした。
どうしよう。やっぱり私じゃ人工知能開発なんてできないのかな。
これじゃあ私たちの種族を救うことはできない。
私は途端に悲しくなり思わず涙をこぼした。
「ああ、それなら別に難しくはないよ」
翔はそのようにあっさりと答えた。
「でも私、プログラミングすらできないんだよ?」
「必要ないよ」
衝撃的な発言をした。
「必要ない?プログラミングが?」
「うん、ノンプログラミングで人工知能開発ができるツールって、今はたくさんあるんだ」
「そんなものがあるの?」
「たとえば『Talk API』という無料で使えるツールがある。これは、チャットボットっていう会話をすることができるアプリを作れるAPIなんだ」
「へえ、無料でそんな便利なものがあるのね」
「ほかにも、SONYが無料で提供している『Neural Network Console』っていうものがあるよ。これはプログラミング不要でディープラーニングを行うことができるんだ」
「え!?ディープラーニング?あんな難しいことができるの!」
「まずはこういったツールで人工知能開発をやってみると良い。そうしていく内に人工知能について知識を深めることができる」
「今度やってみるわ」
「プログラミングの勉強は、人工知能に慣れてきてからでも大丈夫」
「プログラミングかあ。一度も勉強したことがないけど大丈夫かな」
「そんなに心配することはないよ。人工知能開発で使うのは Python っていう簡単なプログラミング言語だから」
「Python? そういうプログラミング言語があるの?」
「Python は、人工知能開発に一番使われているプログラミング言語。コードがシンプルで読みやすく、初心者でも習得が簡単な言語として知られているよ」
「私でもできる?」
「もちろん。Python を学ぶ場合はドットインストールみたいなサイトが便利だ。動画を使ってプログラミングが学習できるんだ。自分で参考書を読むよりも飽きにくい。しかも一単元ごとに練習問題があるから、本当に身についているかどうかが確認できる。効率的に楽しくプログラミングを学べるよ」
「ドットインストールね。これも帰ったらやってみる」
「ドットインストールで Python の基礎を学んだら、次はいよいよ Python を使って人工知能開発をしていく」
「人工知能みたいな複雑なことってプログラミング初心者でも開発できるの?」
「もちろん、1からディープラーニングなどができるプログラムを開発するのは難しい。でも、Python には『ライブラリ』というものがあるんだ」
「ライブラリ?」
「ライブラリとは簡単に言うと、複数のプログラムが一纏めになったもの。ライブラリを使えばプログラムを自分で書かなくても、人工知能開発ができるんだ」
「えっ本当!?」
私はそのことを知って、一気に視界が開けた気がした。
「人工知能関係のライブラリは『Numpy』、『Pandas』、『Matplotlib』などたくさん用意されている。これらを使えば、画像認識なども簡単にできるようになるよ」
ここまで聞いて、私にも人工知能開発が出来そうな気になっていた。
Python の基礎をドットインストールで学んで、後はライブラリの使い方を抑えていく、これだけで良いのだ。
「やるべきことは分かったわ」
「じゃあ後は自分で頑張ってね」
「うん、色々教えてくれてありがとう!」
私はその後、人工知能の勉強を進めていった。
そして、月日が経過し……。
「いやあ人工知能ツールっていうのは便利だねえ」
そんな風に言うのは、スピラーだった。
今まで「借りぐらし」すらやらず、森で獲物を狩るという最も原始的な生活をしていたスピラーは、借りぐらしの基礎について質問したら答えてくれる『チャットボット』をえらく気に入っていた。
あれから月日が流れ私たちの環境はずいぶんと変化した。
私は Python を勉強し、簡単な人工知能ツールを作ることに成功してみせた。
そして、そのツールを仲間たちに見せ、人工知能がどれだけ便利なものかを知ってもらうことができたのだ。
それから私たちの種族は、みんなで人工知能の開発を行うようになっていた。
今ではたくさんの人工知能ツールが、私たちの『借りぐらし』を支えている。
さっきのチャットボットのほかにも、『人工知能で人間が眠っているかどうかを確認できるツール』や『ネズミの行動パターンを分析し、安全に家の中を通ることができるツール』を開発し『借り』で使った。
この間私が開発したのが、ネズミの会話の内容を解読するツールだ。
ネズミが喋っている内容は私たちには分からない。
ネズミは、超音波を使って他のネズミとコミュニケーションを取っている。
そこでディープラーニングを使って超音波を分析し、人間の言葉に変換して何を喋っているのか分かるツールを開発したのだ。
このツールによって、ネズミの驚異から私たちは逃れることができた。
私たちは絶滅するかと思われていたが、人工知能によってまた復活してきている。
種族の数もどんどん増えていくだろう。
今後更に人工知能が発達すれば、ロボットに借りぐらしを丸ごとを任せられるようにもなるかもしれない。
そうなれば、私たちはより一層ハッピーになれる。
人工知能は、私たちの生活を大きく変えてくれるのだ。
おわり