※『借りぐらしのアリエッティ』本編とは設定が異なります。ご了承ください。
本日の「借り」も無事終わって楽しい夕食タイムが始まった。
「最新アリエッティ頑張っているようだね、人工知能の勉強」
「うん!」
お父さんもお母さんも、私が人工知能の勉強をしていることを知っている。
最近私は人工知能の学習が順調だった。
人工知能には色々な種類があるということを知った。
音声認識、画像認識、など色々ありそれぞれ社会の役にもうすでに立っているんだ。
そして、強いAI、弱いAIという概念があることも分かった。
強いAIは命令されなくても自分で動く最強の人工知能、弱いAIは特定分野で活躍できるが命令しないと動けない人工知能。
最初はまず、弱いAIの開発を目指すべきということ。
「実はお父さんも昔、人工知能に関しては勉強したことがあったんだ」
「え?そうだったの?」
初めて知ったことだった。
「だが……」
お父さんは急に深刻な表情になる。
「駄目だったよ。あの時代の人工知能は全然『借りぐらし』の役には立ちそうもなかった」
「あの時代?」
「昔はまだ人工知能が生活に役立つレベルじゃなかった」
「……」
「今の時代は、どうだろうね」
お父さんの話を聞いてふと思った。
そう言えば私は今までどういう感じで人工知能が発展していったのか、まるで知らない。
人工知能の進化の過程を知ることができれば、更に学習を深められるのでは……。
というわけで、善は急げ。
夕食終わりに私は、翔に質問みることにした。
「人工知能がどのように進歩したか?」
「うん、歴史について詳しく知りたいの」
「いいよ、教えてあげる。人工知能の歴史は、大きく3つに分けられるんだ」
「3つに?」
「1950年代〜1960年代の『第1次AIブーム』、1980年代の『第2次AIブーム』、2010年代の『第3次AIブーム』。この3つだ」
「なんだかずいぶん間が空いているのね」
「そうなんだ。人工知能は、ブームと冬の時代を繰り返してきた」
「ヘえー」
「まず『第1次AIブーム』から話すね。この時代には、コンピューターに『探索』をさせられるようになったんだ」
「探索?」
「『探索』っていうのは、解き方のパターンを場合分けして答えを探すやり方のこと。たとえばそうだな、アリエッティは迷路ってやったことある?」
「あることはあるわ」
昔道に迷ったことがあって、そのときは迷路を解くような感じだった。
「迷路を解く場合ってどうする?」
「うーん『こっちがゴール』かなみたいな感じで予測しながら進んでいく感じね。行き止まりだったら、戻って別の道を行く感じ」
「そうだよね。でもコンピューターはそうじゃない。まず『こっちに進んだ場合』と『あっちに進んだ場合』で場合分けする。そして全部の道を順番に辿っていくんだ」
「全部辿るの?」
「コンピューターには『勘』というものがないからね。でも、順番に辿っていくのは得意だ。コンピューターの性能が上がれば、人間がうんうん考えないといけない複雑な迷路も一瞬で解くことができるよ」
「そうなの?すごい!」
「ただ」
「ただ?」
「この『探索』だけできても、ゲームができるようになるだけで、仕事には何の役にも立たない」
「ああそっか」
「やっぱり仕事で役立たなきゃ駄目だよねってことで、『第1次AIブーム』は終わってしまったんだ」
「迷路が解けるだけじゃ、確かに人工知能にしてはしょぼいわよね」
「そして月日が流れ『第2次AIブーム』がやってきた」
第2次AIブーム。たぶん、私のお父さんが勉強していた世代ね。
「第2次AIブームでは、コンピューターに『知識』を入れられるようになった。AIに知識を入れれば、仕事で使えるんじゃないかって思われて」
「知識?」
「たとえば、医療に関する知識をコンピューターにいれれば、病院で患者の診断ができるAIができるんじゃないか、って考えられた。『もし〇〇ならば、△△。』という形式で知識を蓄積して、あらゆる場面でコンピューターが知識を元に動けるようにしたんだ」
「えっ、でも、知識を一々全部入れるのって大変じゃない?」
「うん、めちゃくちゃ大変。医療に関する知識に限定したって、恐ろしいほど膨大な量がある。『微妙に熱っぽい』とか『昨日の夜からくしゃみが出る』とかそういう曖昧な状態に対する対処方法も、全部入力しないと駄目だからね。コンピューターが患者を「風邪」と判断するには」
お父さんが『人工知能は役に立たない』と言っていた理由が分かってきた。
「だからこの方法もあんまり良くないねってなって、第2次AIブームも終了してしまったんだ」
「うーん、この方法でも駄目なのね」
「結局のところここまでの人工知能は、人間に教えられたことしかできていない。人工知能ブームは、また冬の時代に突入した。ところが、そして2010年時代に全く新しい技術が登場したんだ」
「え、何?」
「それが『ディープラーニング』だ」
「ディープラーニング?」
「ディープラーニングは日本語で『深層学習』って言う。ディープラーニングが登場したことで、これまで人間に教えられたことしか出来なかったAIが、ようやく自ら学んで動けるようになったんだ」
「これが『第3次AIブーム』なのね」
「第2次AIブームまでは、たとえばネコの画像かどうかを判断させたい場合、『ネコはヒゲが生えている』とか細かい情報を全部コンピューターに入力させないと駄目だった。ところが、第3次AIブームでは、コンピューターが自動的にネコの特徴を把握して、『これがネコの特徴だ』というのを人間が一々教えなくても自分で学習して理解できるようになったんだ」
「それってすごくない?」
「そう、この『ディープラーニング』は実はめちゃくちゃすごいんだよ。『ディープラーニング』の登場で、始めて人工知能らしい人工知能ができたと言ってもいい」
「人工知能が自分で自動的に学習していければ、人間が眠っている間にもどんどん勝手に成長する。やがて、人間よりも賢い人工知能が出来上がるということ」
私はここまでの説明を聞いて思わずあっけにとられてしまった。
人工知能は何度も試行錯誤しながら、ちょっとずつ進化していったのだ。
そして最近になってようやく、人工知能らしい人工知能が開発できるようになった。
なんだか、すごくワクワクしてきた。私も早く開発したい。人工知能を使ったツールを作って使ってみたい。
だが、ワクワクした気持ちと共に、頭の中には1つの疑問が湧いてきたのであった。
「あ、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「人工知能って、人類が何年もかけてようやく開発できた代物なんだよね」
「うん、そうだよ」
「そんなすごいものを、私なんかでも開発できるの?私、まだプログラミングとかも全然やったことがないんだけど」
今更そのことに気が付いたアリエッティ。
果たして、アリエッティは人工知能開発ができるのか。
つづく