※『借りぐらしのアリエッティ』本編とは設定が異なります。ご了承ください。
人間の男の子翔と出会い「君たちは、滅びゆく種族なんだよ」と突然言われ、私は人工知能について勉強していくことにした。
「だいぶ人工知能のことが分かってきたなあ」
私は、人工知能がどんなものなのか、ということに関しては概ね理解出来てきていた。
ようするに、これまで人間にしかできなかったことをコンピューターにも同じような感じでやらせるのが、この分野の目的なのだ。
もちろんあくまで「同じような感じ」であって、人間と全く同じプロセスでやらせることはできない。
コンピューターは数多くの情報を見て、それを順序立てて解析していき、規則性を見出していくのだ。
そうすることで新しい情報を見た時、今まで見出してきた規則性を元にして、それが何者なのか把握できるようになる。
これが人工知能の基本だということは分かり、私は学習を次に進めていた。
「一口に人工知能と言っても、色々な種類があるなあ」
人工知能と言っても、画像認識やら音声認識やら、とにかくたくさんの種類があった。
私はこれらの種類について勉強しようとしていたが、よく分からないでいた。
そして、もう1つわからない概念があった。
「強いAIと弱いAI……これがさっぱり分からないんだよね」
どうして人工知能に強い・弱いの概念があるのか分からなかった。
「もしかして……人工知能を戦わせたりとかってするの?強い、弱いがあるってことはそういうこと?」
こんな感じで疑問が次々と湧き上がって、今一つ学習が進まなかった。
というわけで私は、また人間の男の子である翔のところまできていた。
ここまで来るときに、他の人間に見つからないかドキドキだった。
「人工知能を勉強すればこういうドキドキともおさらばできるんだから、今は頑張らなくっちゃ」
なんとか私は翔の部屋まで辿り着いた。
「やあ久しぶりだね、どうだい人工知能の勉強は進んでいるかい」
「翔、久しぶり。今日は聞きたいことがあってここに来たの」
「え?何?」
「人工知能の概念そのものは分かったけど、人工知能って色々な種類があるみたいなの」
「そうだね、色々な種類がある」
「たとえば、画像認識ってあるじゃん。あれってなんなの?」
「画像認識とは、画像や写真に何が写っているのか人工知能が識別する技術のことだよ」
翔はわかりやすく丁寧に教えてくれた。
「画像を識別できるの?」
「うん、たとえばネコの画像を識別したい場合、まずたくさんネコの画像を読み込ませる」
人工知能の基本は、まずはコンピューターにたくさんの情報を与えることだ、これは知っている。
「そのあとは、コンピューターがネコの画像から色や形を読み取り、ネコの特徴を学習していく。ひげがはえているとか、毛がふわふわしているとか、そういうネコならではの特徴だね」
「ふむふむ」
「そうすることで、今まで見たことがないネコの画像をコンピューターが見ても、今までの情報からネコと識別できるようになるんだ。これが画像認識の基本だね」
「へえ」
「最近だと、より複雑な画像も識別できるようになってきたんだよ」
私は彼の説明を聞いて、これは「借りぐらし」にも応用できるかもしれないと思った。
たとえば夜中に人間が眠っていると思われる部屋からティッシュを取ってこようとしたとき。
「(人間が眠っているかどうかを判断できない時ってあるんだよね)」
眠っていると思っても実際は目を閉じているだけで、実は起きていることが「借り」の時では結構あって、これで私たちの仲間も捕まってしまったことがあったのだ。
「(もし人工知能を使って、人間が眠っているかを判断できれば……)」
こういう感じで活用できるのなら、やっぱり人工知能は便利なのかもしれない。
「後、音声認識っていうのもあるみたいだよね」
「音声認識っていうのは、たとえばこれに使われている技術のことだよ」
そう言いながら、スマホを見せてきた。
「これは『siri』って言って、こっちが質問すると答えを返してくれたり特定の動作をしてくれたりするアプリなんだ。たとえば『明日の金曜の12時に出かける予定を登録』って言うと、予定をカレンダーに登録してくれる」
「言葉が理解できるのね。『siri』はどうやって動いているの?」
「まず、コンピューターに音声を読み込ませる。そしたらコンピューターは、音声データをテキストデータに変換するんだ。音の強弱や周波数とか間隔とか、そういうものを分析する必要がある。分析が終わったらこれまで蓄積した情報と照らし合わせて、どんな答えを返すのが良いか判断するんだ」
「へえ〜そんなすごいことができるのね」
「もっとも、今はまだ人間の言葉を完璧に理解できるようにはなっていなくて、質問してもちゃんとした返事が返ってこないことも多いけどね」
人工知能はやっぱりすごいということを実感した。
人工知能が人間の生活を大きく変えると言われている理由も分かった。
「後、これが全く分からなかったんだけど、強いAIと弱いAIの違いって何?」
「ああ、強いAIと弱いAIね」
「強いAIっていうのは自分の意思で動くAIのことだよ。人間から何も命令されなくても、勝手に自分で考えて、人間と同じような行動をするAIのこと」
「強いってそういうことなのね」
「強いAIは人間にはまだ作れていないよ」
「そうだったの?」
「フィクションの世界でしか登場していない。たとえば『ターミーネーター』とかだね」
「『ターミーネーター』?」
「あっ、これジブリ作品の話だから、他の作品を例に出すのは良くないんだった。ごめん気にしないで」
「……」
「とにかく、強いAIは現状実現不可能だ。だから強いAIを作るのはひとまず諦めるべきだ。まずは弱いAIを作ることを目指すんだ」
「じゃあ弱いAIは?」
「弱いAIはその逆だよ。人間から命令されないと動けないAIのことだ。さっき説明した画像認識とか音声認識とかも、弱いAIの分類に入る」
「強い、弱いってそういうことだったのね。てっきり、人工知能を戦わせるものだと勘違いしてた」
「どう?だいたい分かった?」
「おかげで疑問が全部解決したわ!ありがとう!」
問題が解決した私は、再び人工知能の勉強を続けていくことにした。
つづく